飛蚊症

放っておくと危険?!
今回は、飛蚊症(ひぶんしょう)についてのお話です。

■こんな経験ありませんか?
明るい所や広い壁、青空などを見つめたとき、目の前に虫や糸くずのような「浮遊物」があるように見えることがあります。視線を動かしてもなお一緒についてくるような動き方をし、まばたきをしても目をこすっても消えません。暗いところでは気にならなくなります。こうした症状を医学的に「飛蚊症」と呼んでいます。

■ 原因は目の中なのです!
眼球の大部分には、硝子体というゼリー状の透明な物質がつまっています。角膜と水晶体を通して、外から入ってきた光は、この硝子体を通過して網膜に達します。ところが硝子体に何らかの原因で“濁り”が生じると、明るいところを見たときにその濁りの影が網膜に映り、目の動きとともにゆれて、まるで虫や糸くずが「浮遊」しているかのように見えるのです。これが飛蚊症の原因です。この飛蚊症には「生理的飛蚊症」と「病的飛蚊症」があります(図1)。

<生理的飛蚊症>

●その1
母体内で胎児の眼球がつくられる途中では、硝子体に血管が通っていますが、眼球が完成するとこの血管はなくなっていきます。しかし、生まれた後も血管の名残りが硝子体に残ることがあり、この“濁り”が飛蚊症の原因となることがあります。このタイプの飛蚊症は、健康な目にも起こる現象ですから、あまり気にしなくても良いでしょう。

●〜その2〜高齢者や近視の人など
年をとってくると、硝子体はゼリー状から液状に変化し、次第に収縮して網膜からはがれてきます(硝子体剥離)。このような変化が飛蚊症の症状をもたらします。これは、年をとるにつれ髪の毛が白くなったりするのと同様、ごくふつうの加齢現象なのです。また、近視が強い人の場合は、この硝子体剥離が早期に起こりやすいため、若くても飛蚊症の症状が出てくる場合があります。眼科の検査で、このタイプの飛蚊症と診断された場合、治療の必要はありません。はじめはうっとうしい感じがしますが、次第に慣れてきたり、硝子体剥離の状態が変わって自然と見えなくなったりすることもあります。


■ 対策はどうしよう?
<病的飛蚊症>

●網膜裂孔・網膜剥離
硝子体剥離やその他の原因で網膜に穴があいたり(網膜裂孔)、その穴を中心に網膜が硝子体の方へはがれてきたりする(網膜剥離)(図2)ことがあります。このような網膜裂孔や網膜剥離の初期症状として飛蚊症の数が急に増えることがあります。網膜裂孔の治療はレーザー光線で裂孔の周囲を固め(光凝固)、剥離を防止します。これは通院治療で行えます。しかし、ある程度以上の網膜剥離を起こすと入院・手術が必要です。網膜剥離は放置すると失明に至ることもあります。

●硝子体出血
糖尿病や高血圧、外傷などにより眼底の血管が傷ついて出血し、その血液が硝子体に入ると、突然、飛蚊症が生じたり、目の前にカーテンを引いたりしたように感じます。出血の場所や量によっては視力がかなり低下することもあります。出血が少なければ自然に治ることもありますが、通常は、止血薬や血液の吸収を早める薬で治療します。症状により、出血部位にレーザーを照射する光凝固療法を行うこともあります。

●ぶどう膜炎
ぶどう膜に細菌やウイルスが入ることや、目のアレルギー反応により炎症が起きると、血管から白血球や滲出物が硝子体に入り込み、飛蚊症の症状を感じます。炎症がひどくなると飛蚊症が増加し視力が低下します。炎症を抑えるための内服薬や点眼薬で治療します。

<アドバイス>
飛蚊症の症状に気がついたら、その原因が病気によるものかそうでないのかを判断する事がとても大切です。必ず眼科で眼底検査を受けることをおすすめします。また、以前から飛蚊症のある方も、見え方が変わった場合には、そのつど眼底検査を受けると良いでしょう。